ブランドは自分たちで作る。複数チャネルでの農産物PR戦略とは|五味あやさん/五味農園/長野県岡谷市


地域農産物ブランド化の動きが盛んになる一方で、そのどれもがうまくいっている訳ではありません。

今回インタビューを行なったお相手は、長野県岡谷市にある五味農園の五味あやさん。五味農園では10年前から自治体のブランド化支援のもと、フルーツコーンの直販に取り組んできました。しかし近年、生産者間でのルールが守られないなど自治体主導でのブランド価値の継続が難しい局面を迎えています。そんな中、イベントへの出店や収穫体験イベント、ポケマルを通じたオンライン上での販売を通じて積極的に自分たちの農園をPRしている五味農園の取り組みについて聞きました。



ーー五味農園さんの甘いフルーツコーンはポケマルでも大人気ですね!もともとどのように生産や販売を始められたのですか?

岡谷市では昔から自治体全体としてフルーツコーンをブランド化していこうという動きがありました。私たちの場合、義父が関連団体の役員をしていたこともあり、当時から積極的にフルーツコーンの生産を行なっていました。

自治体としてブランド化のためのPRを行なっていたり、フルーツコーンの販売に際しても手厚いサポートをしてくれていたので、販売はずっと農園での直接販売のみを行なっていました。リピーターも多く、現在でも実は売上のほとんどは農園での直販によるものです。



ーー売上のほとんどが農園での直販とはすごいですね。そんな中でどうして地域外での販売も始めたのですか?

自治体をあげてのブランド化が始まった当初は、組合の中で規格や値段設定、販売場所までルールが決められていたため、品質が担保され現地でしか食べられないものとしてブランド価値が付きました。さらに、商品名も「ゆめあかり」という統一の名前でお客さんの間でも浸透していました。



ただ、数年経つとそのルールを守らずに販売活動を行う生産者が出て来たので、品質も落ち、ブランドを継続していくのが難しい状況になってしまったんです。せっかく自分たちがこだわって作っても、品質の悪いものと同じ括りで見られてしまう。それが嫌で、私たちはその組合から抜けることを決意しました。



ただその組合から抜けるということは、これまで使ってきた「ゆめあかり」の名を捨て、独自でブランドを作って自分たちの力で販売していかなければならないということを意味していました。当初は名前を変えてもお客さんが付いて来てくれるのか不安でしたが、販売を続けているうちに、直接説明をすればお客さんの理解を得ることができるので名前は関係がないのだとわかってきました。



ーー直接販売であれば、自分たちのこだわりも伝えやすいですよね。最近では青山のファーマーズマーケットにも積極的に出店されていますが、出店することにどういったメリットを感じていますか?

組合を抜けてから農園での直販以外の販路を模索し始めたのですが、特に最近は自分たちの農園のPRのため都市部にも毎週のように出店するようになりました。そうすることで都会のお客さんがどういう買い方をしているのかにも気づくことができます。



例えば、農園での直販の場合はお客さんも車で来るので、最低でもコーンを5本、多い方だと100本といった単位で買ってくださるのですが、マルシェに出店するようになって「都会の人はコーンを1本ずつ買うんだ」と気づくことができました。(笑) その気づきが、現在ポケットマルシェでの商品作りにつながっています。

それから先日たまたまサイズの小さいコーンがたくさんできたのですが、味見用としてお客さんに出してみたら意外と評判がよくて。お義父さんは小さいものはみっともないし身内で食べるのがいいと言っていたのですが、味は美味しく実もしっかり詰まっていましたし、お客さんからしたら食べやすくてみんなで分けるにもちょうど良いですよね。直接販売だからこその、商品を無駄にしない色々な売り方が見えるようになってきました。



ーー農園や直売所での販売、イベント出店もされてきた五味さんがなぜポケマルも使い始めたのですか?

これまでは直売所に商品を持ち込んで委託販売もしていたのですが、出品のために商品を運ぶ往復の手間もかかりますし、さらに売り残りが出たら引き取りに行かなければなりませんでした。最近祖父の介護のため家を離れることが難しくなり、手軽に自宅からでも販売ができる方法はないかということで、ポケマルを使い始めました。



もともと私たちのコーンを全国の人にもっと知ってほしいという思いはあり、インターネット販売をやってみたいとも思っていました。義父は最初はインターネット上での販売に対して疑いの目を持っていたのですが、介護で手が離せない大変な時期ということもあり、ポケマルを使い始めることに同意してくれました。



ーーポケマルで実際にインターネット販売を始めてみて、これまでやってきていた直売との違いはどのように感じていますか?

出品を始める前は、私も消費者としてポケマルを使っていたんです。その時に注文したものがすごく美味しくて。しかも生産者の顔が見えるので安心して買える、離れていても新鮮な食べ物が手に入るというのは、一消費者としていい仕組みだなと思っていました。



出品者側としては、注文が来た分だけ収穫して、送られてくる伝票を貼って発送するだけというのは本当に楽ですね。市場に出すほどの量が作れなくても、(集客や集荷の手配など)全部やってくれるので気負わずに販売できます。



ーーご自身の農園でも収穫体験イベントやカフェ運営など次々に新しいことに挑戦されていますよね。そうした地域での取り組みと都内での出店やオンライン販売が繋がる部分はあるのでしょうか。

ファーマーズマーケットやポケマルで商品を購入してくれた人が、「農園に遊びに来たい」と言ってくれることもあります。また、最近お客さんに配布している農園のパンフレットに「ポケマルでも購入できます」という記載を始めました。こうすることで一回の購入で終わらずにポケマルを通じて継続して買ってくれるようになるといいなと思っています。


ーー最後に、全国の生産者へメッセージをお願いします!

せっかくこだわりを持っていいものを作っているのであれば、地産地消で終わってしまうのはもったいないと思います。



例えば私たちの農園では、フルーツコーンは産地も季節も限定的なのでわざわざ現地まで買いに来てくれる人もいますが、それ以外の冬野菜はあまり知られておらず農園まで買いに来てくれる人もいません。だからこそ、「信州にこんないいものがあるよ」と自分たちから全国に発信して、色んな人に知ってもらわないといけないと思っています。



そんな時、私たちのようにアルバイトも雇えないような小規模生産者でも、簡単に自分たちのこだわりの農産物を発信できるので、ポケットマルシェはありがたいです。



(編集部より)

地域内の直販でリピートの顧客を安定的に確保し、農園カフェや収穫体験に来てもらうことでよりコアなファンに育てていく。都内のファーマーズマーケットでは自分たちの農園についてPRしファンをつくるとともに、都内の顧客層のニーズを把握して自分たちの商品作りに活かしていく。そして、こうしたオフラインでの取り組みから、オンラインでの継続した購買に誘導していく。


これは、複数の販売チャネルを持っているからこそできるPR戦略と言えるでしょう。ポケマルでの出品も今期始められたばかりとのことで、これからの展開も楽しみです!



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