ターゲットとそのニーズについて<出口戦略>|直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座③

   

 皆様、こんにちは。大平恭子です。

 「直販農家のための、Fun×Fanマーケティング講座」は、今までの実践や講演セミナー内容、指導アドバイス事例を、大平流に連載ブログ形式でお届けするものです。

 

 本編の3回目は、「ターゲットとそのニーズについて <出口戦略>」についてです。

Vol.1で、直販農家のマーケティング思考とは『自身が設定した顧客対象層のニーズを掘り起こし、提供する商品サービスを通じて「顧客の価値を生み出す」活動全体の考え方である』とお伝えしました。そしてその顧客対象層に合理的にアクセスする方法として「販売チャネル」があります。


「販売チャネル」とは、商品やサービスを対象顧客層に販売する場のこと。直販農家の場合には、それを自由に選択することができますが、やみくもに選んではかえって経営効率が悪く、自身の経営資源や強み・弱みをきちんと把握整理したうえで、それぞれの目的に応じて戦略的に組み合わせていくのが肝要です。


◆販売チャネルの「選択と集中」

 販売チャネルは実に様々です。個人を相手にしたところでいうと、代表的なものとしては百貨店・スーパー・コンビニエンスストア等の小売店、カタログ販売、インターネット通販等。実需者向けには、飲食店、仕出し屋、給食施設等。産地直売所やマルシェのようなイベントや対面販売も「販売チャネル」となります。そして、このような数多くの「販売の場、販売の機会」において、戦略的な視点で販売活動を行っていきます。


例えば、配達できる時間距離以内の店舗を商圏として考え、面的な広がりの中で顧客との接点を作っていくのもあるでしょうし、「商品説明と直接交流」を目的に毎週毎週のイベント出店を積み重ねる場合もあるでしょう。いずれにしても経営規模から勘案して、販売チャネルにおいては総花的でなく「戦略と集中」が図られることが肝要で、「やること」を決めると同時に「やらないこと」を決めていくことが大事です。

 「販売の場所」を定めたら、そこで「見つけてもらう」「知ってもらう」「手にとってもらう」に意識を向ける必要があります。自農園を認識させるシールラベルの貼付やQRコードの活用等は売場でもよく見かける手法ですが、「直販」としてさらに踏み込むならば、 まずは「あなたのためのものです」というメッセージを込めて、対象を絞り込むことが有効です。

 


◆ターゲットを明確にした、まつさか農園の「お子様向けみかん」  

 たとえばポケットマルシェでも、ターゲットを意識したよい出品事例がありました。和歌山県のまつさか農園さんは、昨年12月に2Sサイズ以下の訳ありのミカンを「お子様向け」とし、そのおすすめポイントを明確にしながら販売。「お子様向け」が気になって、試しに購入をしてみました。  確かに粒も小さく、皮もむきやすく、幼稚園ぐらいの子供にとっても食べやすいサイズ感。「自分でむいて食べる」楽しさや「残さず食べる」といった食育にもつながり、そう。小さな子供がいるお友達がいたらお勧めしたくなるようなミカンでした。

 「規格外を何とか売りたい」と自分目線ではなく、子供が1個食べきれるサイズ感や外皮はむきやすく、中の皮(じょうのう)も柔らかく食べさせやすいという実体験に基づいた大人目線(子育て目線)でご提案されたのでしょうか。あるいは、販売機会を通じて潜在的なニーズを掘り起こし、新しい顧客を開拓するという方針だったのでしょうか。残念ながら、まつさか農園さまとはまだ一度もお目にかかったことがなく、機会がありましたらお聞きしてみたいと思います。



◆農産物・直販農家における出口戦略とは 

 「出口戦略」とは、自身の農産物を選んでもらう(=買ってもらう)という目標を達成するための方策であり、先述の販売チャネルの先にいる見込み客に「見つけてもらう」「知ってもらう」「手に取ってもらう」ためのものです。逆に、狙うターゲットやそのニーズが明快な場合には、それにアクセスできる「販売チャネル」を選ぶ、あるいは開拓をしていきます。「直販」の醍醐味は、この一連の活動を自身の裁量で行うことができることであり、直接お客様と接して観察したり情報収集できるのは、直販農家の「強み」です。今回の記事で、皆様が今までの販売活動やチャネル選びを振り返り、新たな気づきをご提供できましたら幸いです。


【プロフィール】

ブランドストーリー 代表 大平恭子

食農連携の分野で「売り方・食べ方で人と地域を活性」をミッションに、付加価値化と魅力増大を図る専門家。生産者・農産物ブランディング、食事業者に対する健康食材コーディネートやレシピ開発、加工品開発支援、講演セミナー等を行っている。

健康的でポジティブなライフスタイルを実践するために始めたランニングは1年で10km走れるようになり、2018年3月には名古屋でのハーフマラソンに初挑戦の予定。

6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター


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