こんにちはポケマル本間です。
ポケマルはおかげさまで8月に利用生産者数800名を突破いたしました。ご利用のみなさんに満足いただけるよう「売る」そして「稼ぐ」ことに向き合っていきたいと考えています。
さて先日、ポケマル生産者でもある神奈川県小田原市の檀上さんのFacebookで気になる投稿がありました。
「いきなり、ぶっちゃけるけど、僕の昨年度の所得は、『−50,000円』です。」
「参考までに、僕たち夫婦の年商は約1000万円。」
公開での決算報告!!衝撃を受け、「「農業で生活できるの?」に対する真面目な回答」という長文投稿(しかも前編・後編の2部作)を読み進めました。
農水省や県の統計情報や制度情報を読み解き「農業所得率はだいたい20−30%」「神奈川県で2000万円以上の売上がある農家は485件で、販売農家の4%」といった論考が展開されています。6年前に就農する前は銀行勤務や企業経営を経営されていたという檀上さんならではの投稿でした(ご興味ある方は檀上さんのFacebookページをご覧ください)。
今回は檀上さんと会話した、農業の「稼ぎ方」について書いてみたいと思います。
(小田原でご夫婦で自然養鶏や農業を営む。屋号は「春夏秋冬」。)
「稼ぎ方」が大切
ーー Facebook投稿読みました。アツいですね!あの投稿を書いた真意をおうかがいしたくて時間をいただきました。
「農業で生活できるの?」ってよく聞かれるんです。それと、今年から研修生の受け入れを始めたのですが、現在の農業研修制度に思うところが色々ありまして。
ーー 色々あるとは・・・?
農業研修生の受け入れに国が補助金を出す仕組みになっていますが、研修生って使い方によっては無料/安く人を雇える制度という側面があります。研修の名目で実際めちゃめちゃ働かせても、雇用契約を結ばず最低賃金を下回る賃金(もしくはお駄賃)しか支払っていないような例が結構な数あるんですよね・・・。
たとえば僕が就農する際、有名な農家さんのところをいくつか視察に行ってたんですが、何人も研修生が来ている現場をいくつも見ました。中には1日中草むしりをやってる子もいて、なんの学びにつながるのかな?なんて疑問に思ったこともありました。
農薬などに頼らない有機系の農業の場合は特に、人件費がコストの多くを占めます。研修ではなく「安い労働力」として研修生を使うことは、単純に「稼ぐ」という目的のためには合理的な側面はあります。
でも、すごく違和感があって。。稼ぎ方ってあるよなと。
ーー 稼ぎ方、確かに大切ですよね。
そうなんです。僕は横井(研修生)にもちろんちゃんとした賃金を払ってますが、稼ぎ方にはマナーがある、というか、まっとうな稼ぎ方をすることが大切と思うのです。業界としての健全化を計らないと、人材が集まらないですから。
(2018年3月に農業高校卒業ののち、檀上さんの門を叩いた研修生の横井さん。ポケマルでも出品を開始した)
信用を軸として稼ぐ
ーー では、檀上さんの稼ぎ方について教えてください。年商1000万円、たしか全て直販でしたよね?
はい。7割が個人、3割が関係のある企業や食品スーパーに販売しています。安定性や副次効果など色々考え、個人比率は以前の9割から7割に下げました。
ーー すごいですね。どうやってそこにたどり着いたのでしょうか。
僕は経営理念とし「養鶏と農業を通じ、地域社会が抱えている課題の解決もしくは改善に貢献する。」ことを掲げています。小田原でいえば、課題はたとえば後継者不足や耕作放棄地など。そこに共感してくれる人が、僕のお客さんになっています。
ーー どうやって理念を販売につなげているんですか?
目先の利益より評判を集めること、でしょうか。うちの卵は1つ150円します。安心安全や美味しいにも当然自信がありますが、それだけで戦っては価格競争に巻き込まれて勝てないと思います。150円でも買ってくれるお客様、そして私がお付き合いしたいお客様は、僕が地域課題に向き合っている取り組みを評価してる人なんです。
なので、情報はすべてオープンにしています。ウソ偽りはちょっと調べればすぐにバレてしまう時代です。取り組んでいること、考えていること、ときには直接食べ物に関係ないことも含め、SNSなどでどんどん公開しています。そうして共感してくれたお客様は定着率が違います。
ーー すべてをさらけ出し、人として信用を積み重ねると。今やられている「トラスト」という仕組みも、生産物ではなく檀上さんご夫婦への信用にお金がついてきているように感じます。
そうですね。「養鶏トラスト」という形で、僕たちの人材育成の取り組みの賛同者を募集しています。
仕組みはこんな感じです。①賛同者は月額6,000円負担します。②賛同者には毎月1回、卵30個を届けます(養鶏トラスト終了時には鶏肉も届けます)③売上は人材育成に再投資します。※卒業時に刈払機、管理機、播種機、トラクター等、最低限の機械類を譲渡。研修生が自分で鶏舎を建設し、自分で鶏を飼育する環境を整備します。
はじめて間もないですが、すでに50人の方がトラストに加入してくれています。中には「卵はいらない」って方もいますね。
ーー モノではなく取り組みにお金がつく。継続型のクラウドファンディングのようですね。
「再投資」ってみられてると思うんです。稼いだお金をなにに使うのか。ピカピカの車を買う人もいますが、僕は理念に基づき、人材育成に再投資する。そうした姿が信用となって共感者が増えていければと思っています。
新規就農者に必要なものは、お金と経験と信用
ーー そんな檀上さんは、研修生の横井さんにどんなことを伝えてるんですか?
技術はいまは後回しで良いって言ってますね。自然農法、自然養鶏、などなど技術信仰はいろいろとありますが、そういうくくりでブランドをつくるのではなく、自分の理念を持てと。技術は時間とお金をかけて身につけていけばよいと。
そして「お金と経験と信用」が大切と伝えています。まわりで色々見てきました。技術はあるけど信用がなくて潰れた人、お金がなくて首が回らなくなってしまった人。で、この3つって僕が与えてあげられるものなんですよね。だからこれらを研修期間で身につけてもらえるよう僕も考えて研修をしています。
ーー お金と経験と信用。具体的にはどういうことでしょうか。
お金でいえば、研修期間や独立後も時給1000円以上の作業をお願いしたり、トラクターも軽トラなどをあげることで、独立する際に必要な初期費用を援助をしています。土地もそうです。後継者を育てていると地域で知られてくると、「うちのじーちゃんがもう畑出れなくなって・・・」という相談が集まってきます。それを僕は横井にまわしてあげることができます。
経験については、人は教えられるより、自分でやる場を与えられるほうがずっと伸びますよね。農地が余ったら横井に管理させ、余剰の生産物がでてきたらその販売も責任持ってもらう。生産も販売も含めて経営です。何年草むしりしてといったことせずとも、いきなり経験を積ましてあげたいんです。横井がポケマルに登録しているのも、最高の実践の場と思ってのことです。
こうして、自ら実践を繰り返すことで、信用が積み重なっていきます。研修期間中にお客さんがついていく。独立時点で共感するお客さんがいる状態をつくってあげたいんです。
ーー 横井さんが自分自身の信用で稼げるようになる日が楽しみですね!
はい。横井には卒業までに自分のトラストに30口集めるようにって言ってます。すでに2口いただきました。嬉しいですよねこういうの。
ポケマルに期待してるのは、データです。局地戦になりがちの農産物販売ですが、幅広いマーケット情報を提供してもらえると、さらに彼女の成長になると思います。
ーー はい、僕たちもどんどんデータ開示含めて生産者のみなさんのお役に立てるよう動いていきたいと思います。今日はありがとうございました!
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