食の安全と安心について|直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座⑥

皆様、こんにちは。大平恭子です。  


 「直販農家のための、Fun×Fanマーケティング講座」は、今までの実践や講演セミナー内容、指導アドバイス事例を、大平流に連載ブログ形式でお届けするものです。本編の6回目のテーマは、「食の安全と安心について」です。 


  職業柄、6次産業化や農商工連携といった分野で新商品開発や販路開拓支援や、実需者向けに対しては農産物のPRやレシピ開発のサポートをしています。その現場では、農業への思いやおいしさへのこだわり、栽培技術や環境保全の取り組み等、自分たちの農産物の「付加価値」を高めるための情報活動が行われるのですが、それらを下支えする生産活動における安全性向上への取り組み、経営体としての信頼性について、客観性をもって可視化(見える化)されることはあまり多くはありません。  


 生産者として、食べ物を作っているのだから「安全であることは当たり前のこと、あえて言う必要はない」という意見もありますが、買い手である消費者や実需者の視点は果たしてどうでしょうか?



◆消費者や流通業者の、農業生産工程管理に対するニーズ


  ここでひとつ、農林水産省が示したデータを事例にお伝えしたいと思います。 

 【図表1】は、農業生産工程管理(GAP ※注1)に対する消費者のニーズを示したものです。「取り組む必要」があるは、全体の92%、また、その理由として、食品の安全性がより高まるため(53%)、生産情報が明確になるため(23%)、信頼が高まるため(9%)とあります。 


【図表2】は、農業生産工程管理に対する流通加工業者のニーズについて示したものです。

(※注2) 


 「GAPの取り組みについての取引の参考あるいは活用理由」について、食の安全性が高まるから(32%)、安全性を担保する農場として取引先や消費者に説明できるから(32%)、生産情報が的確であるから(11%)と続いています。 


 これら図表1・2のデータの結果について、「食の安全性を担保するには、GAPが必須」ということではなく、「GAP」という管理手法の導入やそれを活用しての経営マネジメントが、食の安全や信頼性に対し「客観的」で「納得性が高い」ということを意味しています。そして、本質的なニーズとしては、その情報発信や対話を通じて「安心したい」「安心につなげたい」ということになろうかと思います。



◆「安心」を育みブランドをつくるコミュニケーション


 人間が生きていくうえでリスクゼロは不可能であり、このリスクを社会が受け入れるレベルまで最小化している状態を「安全」といい、「科学的な評価」で裏打ちされているものです。また生産者にとっては、各省庁が定めた法令順守が責務であり、社会的責任でもあります。  


 一方、「安心」とは、持っている価値観や体験・経験を通じて、使い手や食べ手が主観的に作り出している「心理状態」です。そして、単に農産物が「おいしい」とか「食べてうれしい」という状況ではなく、「あなただから安心」「この農場だったら信頼できる」といった「深い関係性」が築かれている状態です。もちろん安全性の確保が大前提ですが、多面的な取り組みを通じて、「ブランド化」されている状態と言っていいかもしれません。  


 それは、どちらか一方の要求や期待の上に成り立つのではなく、双方で育み、高めあうもの。もし相手が知らなかったり、気づいていないことであれば、積極的に「意識を耕す」ことが大事です。例えば「圃場見学」や「収穫体験」も、「ただ参加者に喜んでもらうため」ではなく、「生産活動の実体とプロとしての視点」をプレゼンテーションする場として位置付けることで、発信する内容も変わってきます。意図をもって「発信」することで、その反応から新たな気づきを得ることができます。そして、その(ぶれない)対話の積み重ねの成果が、関係深化へと繋がっていきます。 


 今回の内容が、皆様の気づきや新たな行動へと繋がりましたら幸いです。  



(※注1);農業生産工程管理(GAP)とは、農業者自らが生産において気を付けなければいけないことを「農業の作業ルール」として定め、その取り組みを記録として残し、改善活動につなげる管理手法のこと。生産段階での多様なリスクを総合的に管理する手法であり、「食の安全」「労働安全」「環境保全」「経営改善」等を目的とする。


 (※注2)図表1・2ともに、農林水産省HP掲載「農業生産工程管理(GAP)の現状とこれからに向けて」より引用。 





【プロフィール】
ブランドストーリー 代表 大平恭子



食農連携の分野で「売り方・食べ方で人と地域を活性」をミッションに、付加価値化と魅力増大を図る専門家。生産者・農産物ブランディング、食事業者に対する健康食材コーディネートやレシピ開発、加工品開発支援、講演セミナー等を行っている。 健康的でポジティブなライフスタイルを実践するために始めたランニングは1年で10km走れるようになり、2018年3月には名古屋でのハーフマラソンに初挑戦の予定。 6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター  

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