自分の大切にしている価値、強み、ウリを明確にしよう。|直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座②

皆様、こんにちは。大平恭子です。


「直販農家のための、Fun×Fanマーケティング講座」は、今までの実践や講演セミナー内容、指導アドバイス事例を大平流に、連載ブログ形式でお届けするものです。本編の2回目は、「自分の大切にしている価値、強み、ウリを明確にしよう」についてです。


 この「自分の大切にしている価値」は「経営理念」という言葉にも置き換えることができます。今これをお読みの皆様は、経営理念はすでにお持ちでしょうか?言葉として言い表さなくても、心にともる「思い」はお持ちではないかと思います。


 経営理念とは、「なぜ農業をするのか、それで何を実現したいのか」の思いや価値観、存在意義を顧客や社会に対しメッセージ化したもので、経営活動における行動指針として活用していきます。ここで大事なのは、自分にとって、あるいは自分の組織にとって、①実現性のあるもの、②強み・弱みでいえば、「強み」や「独自性」を伸ばして、価値提供できること、③社会に役立ち、人を幸せにすること ④持続可能なこと。・・・これらに対し整合性と一貫性を取っていくことです。


◆まずは自分の強み・弱み分析から。


 上記のことを明確にしていくために、まずは自分の経営に関わる持ち物や人材、情報、設定した市場環境の中での強みや弱み等を洗い出してみてはいかがでしょうか。一人で難しく悶々と考え込むよりは、家族や従業員、仲間や信頼できるブレーンと気軽に何度もディスカッションする機会を作って練り上げたほうが「気づき」も得られ、行動に移しやすいかと思います。

どんな言葉でもいいので、まずは明文化してみましょう。うまく練られると、①独自性を活かせる領域が明確になり、②方向性や成長性を示唆し、③社会や自然環境に貢献するものになっていくはずです。


◆湯河原の柑橘農家の事例


 少し理屈めいた話が先行しましたので、今回のテーマに関連する事例をご紹介します。

今回ご紹介するのは、神奈川県湯河原町門川地区の飛田柑橘園の飛田泰典さん。栽培適地である湯河原の、海を見下ろす園地で5代以上続く柑橘農家さんです。彼とは、約3年前、私が講師をつとめたセミナーに参加していただいたことで知り合いました。


飛田柑橘園では、季節が移り替わるごとに大津みかんをはじめ、ゆず、レモン、せとか、甘夏など様々な柑橘類が登場します。また栽培においては手作業での除草や除虫により農薬使用量を通常の3割まで削減、収穫後の低温貯蔵では伝統的な道具を今でも大切に使い、「甘い」だけではなく、きちんと酸味も感じる「みかんづくり」を守り抜いています。

 彼が大切にしている思いは、「みかん農家が「自ら楽しんでいるコト」をお客様に届けたい」ということ。毎日接している畑や農産物の、五感に感じる楽しさをSNS発信や加工商品や販売時のディスプレイ等に生かしています。特に「農家が楽しんでいる農産物の風味」をたくさんの人と共有したいとの思いから独自製法で開発をした「飛田柑橘園の季彩オイル」は、季節で移り替わる多様な柑橘の香りと味わいが楽しめるフレーバーオイル。経済産業省の The Wonder 500™ (日本が誇るべき優れた地方産品を選定し海外に広く伝えていく取り組み)で認定され、日本の魅力である”おもてなし”心あふれる商品を発掘し、国内外に発信するコンクール「おもてなしセレクション」では、金賞を受賞した逸品です。


飛田さん自ら栽培・収穫・加工・販売を一貫して手がけ、品質を保ちながら平均10種類くらいで展開している「季彩オイル」。その時々で収穫される量が異なるため、加工・販売される本数は限られますが、このオイルの香りとともに四季折々の柑橘畑の情景が感じられると評判です。そして飛田さんは「これは、小さな農家だからできること」と胸を張ります。


 直販農家の最大の強みは、自分の理念を基に、「自分だからできること」に集中し、主体的に自分の市場顧客を創造することができること。レッドオーシャン(注1)ではなくブルーオーシャン(注2)で勝負できることではないでしょうか。飛田さんとの出会いからこんなことを思っています。この記事が皆様の「気づき」に繋がりましたら幸いです。


飛田柑橘園



(注1)レッドオーシャン:競争相手のたくさんいる既存市場のこと。より多くのシェ

             ア獲得を目指す。

(注2)ブルーオーシャン:レッドオーシャンの対義語。競争をしない、独自性を活かせ

             る領域。新たな競争のない市場を創造すること。

【プロフィール】

ブランドストーリー 代表 大平恭子

食農連携の分野で「売り方・食べ方で人と地域を活性」をミッションに、付加価値化と魅力増大を図る専門家。生産者・農産物ブランディング、食事業者に対する健康食材コーディネートやレシピ開発、加工品開発支援、講演セミナー等を行っている。

健康的でポジティブなライフスタイルを実践するために始めたランニングは1年で10km走れるようになり、2018年3月には名古屋でのハーフマラソンに初挑戦の予定。

6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター

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